2025/8/26

Tokyo Artisan Intelligence(TAI)は,画像と機械学習による自動化システムなどの実装のため,FPGAボードを独自に開発した.
現在のところ,ボード単体の販売は予定しておらず,自社で請け負うシステム開発の実装用として使用する.
このボードはEfinixのTi375を搭載しており,PCI Expressスロットに挿して使用できる.
TAIは,交通インフラや産業用装置などで使われるシステムの開発をすることが多いため,ボードは筐体に実装することを想定して開発されている.



●FPGAベースのシステムは消費電力と排熱で有利
TAIは機械学習による推論回路を直接回路化し,FPGAに実装する技術に強みを持つ企業である.
画像を使った機械学習のハードウェアというとGPUベースのものも多く見られるが,それらは消費電力と発熱が多く,排熱を考慮した筐体設計に苦労することが多い.
これまでTAIでも,GPUベースのシステムをテストしたことがあるものの,熱問題に加えてチップそのものに関係する故障も少なくなかったそうだ.
発熱量が多い場合,冷却ファンが必要になることで,筐体の防塵・防滴設計の難易度が高くなるうえ,定期交換のためにメンテンナンスコストが上がる.産業用装置などでは10年以上使うことも普通であり,安心して長期運用したいという声が多くあり,FPGAを使うことでそれらの要望に答える.
●従来ボードはCPU性能がボトルネックだった
TAIはこれまでにも,FPGAチップを搭載した独自のコンピュータ・ボードを開発しており,FPGAとCPUを持つシステムで機械学習を用いたシステムを実装してきた実績を持つ.
従来使っていたK26 SOM(AMD)に搭載されるMPSoCは1チップでFPGAとCPUを実装できる長所がある一方で,内蔵されたArm CPUが処理のボトルネックになり,全体のパフォーマンスを上げられないケースがあったそうだ.
そのようなケースに対応するため,アプリケーションに合わせた性能のCPUを選択できるよう,FPGAとCPUのチップを分ける方針で,新たに設計されたのが写真1のボードである.
このボードは,FPGAとしてTitanium Ti375(Efinix)を搭載している.
PCI Expressスロットに差し込める形状になっており,外部に用意するCPUとはPCI Expressで接続する.
これにより,アプリケーションや要求仕様に適切な性能のCPUを選択できるようになった.
CPUおよびそのマザーボードは,産業用として流通しているものを利用するそうだ.
筐体は,FPGAボードとCPUボード,電源などを搭載できるようになっており,熱や振動といった厳しい環境に対応できるシステムを実現できる.


※本稿はFPGAマガジン編集部がTokyo Artisan Intelligenceを取材し,執筆したものです.