NEDOとシャープ株式会社は,PythonコードからRTLコードを自動生成するソフトウェアツールをオープンソースとして公開した.
 エッジにおけるAI処理の要求の高まりをうけ,画像認識や映像内の物体検出,あるいは超解像などのAI映像処理を想定して開発した.AI専用処理デバイスのほか,映像データ処理向けAI専用LSIの開発にも利用できる.
 4K映像から8K映像への超解像処理について,生成されたRTLコードをFPGAに実装して実証したところ,GPUを搭載したエッジ端末に比べ40倍以上の高い電力効率が得られた.

 下図のデータ処理フローを用いており,次の機能や特長を持っている.

データ処理フロー(出展:NEDO)


●ツールの機能

 PyTorchやONNXに対応できるフレームワークにより,多様なAI映像処理アルゴリズムからRTLコードを生成できる.
 複数の演算処理を1つの処理に統合するレイヤ統合機能を搭載し,演算処理の効率化や高速化を実現する.
 C言語で,RTLコードの機能検証が行えるCモデル生成機能も搭載した.専用デバイスでAI処理を行う際に必要となる学習済みパラメータを得るための,量子化対応したAIモデルもPythonコードで生成する.

●生成するRTLコードの特長

▲AI映像処理回路の消費電力削減できるRTLコードを生成する

 映像データのフレームメモリを使用せず,ラインメモリで効率的に処理を行うフレームメモリレス構造を開発した.これにより,消費電力を削減し,データ入出力に必要な時間を短縮できる.

▲AI処理に特化した回路を生成

 畳み込み演算などの代表的なAI演算に特化した4次元での処理に対応する演算器構成の回路を生成する.映像データの特性である2次元配列に最適な処理により,リアルタイムでの処理を可能とする.

▲重複処理を削減する境界バッファ

 隣接するラインメモリの間に境界バッファを設定する.並列処理時に発生する重複処理が効果的に削減され,処理効率が向上することで全体のパフォーマンスも改善する.

▲量子化ツールの小数点位置の変化に対応した固定小数点数演算回路

 浮動小数点数演算に近い精度でのデータ処理が可能となり,高度なAI映像処理にも対応できる.

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 NEDOは「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」の一環として,エッジ領域に適したAI半導体eデバイスの早期実現を目指した開発を進めている.
 2023年度からエッジコンピューティングの産業応用に取り組んでおり,その一環として本事業をシャープと共同で進めてきた.

関連情報

(1)NEDO;映像データ処理用AIデバイス向け高位合成ツールを開発しました

https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101854.html

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