●AIアクセラレータを内蔵するプロセッサRZ/V2Hシリーズ発表

 ルネサス エレクトロニクスは,独自のAIアクセラレータであるDRP-AIを内蔵したマイクロ・プロセッサRZ/V2Hシリーズの量産を開始した.
 DRP-AIは,動的再構成プロセッサであるDRPと,積和演算器(MAC)で構成される処理装置であり,AI推論処理をCPUからオフロードできる.
 この世代のDRP-AIは,電力性能を従来の10倍高め,10TOPS/Wを実現している.

●枝刈り済みモデルを効率よく使うハードウェアを内蔵

 AI推論処理における演算効率を向上させるために,学習済みモデルに対してプルーニング(枝刈り)する手法がある.枝刈りによってモデルのサイズを縮小することはできるが,CPUやGPUなどといった従来の演算器では推論処理の演算量を減らすことは難しい.新世代のDRP-AIでは枝刈り済みのモデルを使う場合に,効率よく積和演算できるMACを用いており,処理速度と電力効率を大幅に向上させている.
 最大80TOPSのAI推論性能を実現したことで,画像AIアプリケーションなどをクラウド側の処理に頼ることなく実現できる.

●Linux実行用のCortex-A55とリアルタイム制御用のCortex-R8を搭載

 RZ/V2Hは,Linuxやアプリケーション実行用として,最高動作周波数1.8GHzのCortex-A55(Arm)を4コア搭載する.さらにRTOSやロボット制御用として最高800MHzで動作するCortex-R8を2コア搭載する.サブCPUとしては,Cortex-M33を1コア搭載する.
 これらを使うことで様々な処理に対応できるので,ビジョンAIなどを含むロボット制御を1チップで実現できる.
 ルネサス エレクトロニクスは,「RZ/V2Hによって,ビジョン AIによる目を持ち,自ら考えてリアルタイムに動くことのできる,まさに自律型の次世代ロボット開発が可能になる」としている.

●低消費電力・低発熱なシステムを構築できる

 RZ/V2Hは電力効率の高さを生かし,機器の小型化とシステム・コストの低減,信頼性の向上を目的としたファンレスのシステムも実現しやすい.メンテナンス・コスト削減のため,ファンレスの要望が強い産業用機器などに適する.

カメラ画像を使ったAI推論処理実行におけるGPUボードとの発熱比較

●もう1機のDRPには好きな回路を実装可能

 RZ/V2Hには,DRP-AIとは別に,もう1機DRP(DRP#1)が搭載されており,こちらは汎用的に利用できる.
 このDRP#1には様々な回路を実装できる.例えば,RZ/V2H用のSDKを利用することで画像処理ライブラリOpenCVの処理をCPUに比べて最大16倍高速に実行できるOpen CVアクセラレータとして利用できる.
 これをDRP-AIと組み合わせることでAI処理と従来の画像処理アルゴリズムの両方を高速化できる.従って,ロボット掃除機などで使われるVisual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などの処理を高い電力効率かつ低遅延で実行できる.

 
●開発用ツール


▲ソフトウェア

 各種ユースケースに応じた学習済みモデル群 AI Applicationsが提供される.これを利用すれば,AIアプリケーションを短期間で開発できる.
 加えて,AIを使った独自のユーザ・アプリケーション開発用にAI SDK(Software Development Kit)を利用できる.


▲ハードウェア

 ルネサス エレクトロニクス製のRZ/V2H評価ボードに加え,シングル・ボード・コンピュータKakip(ユリ電気商会)が販売される.これらを使うことで,RZ/V2Hを利用するAIアプリケーションを早期に評価できる.

ルネサスエレクトロニクス製の評価ボード
RZ/V2Hを搭載するラズパイ・サイズのシングル・ボード・コンピュータ(写真は開発中のもの)

ルネサスエレクトロニクス RZ/V2H

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