Tokyo Artisan Intelligence株式会社(以降TAI)は,独自アーキテクチャによるエッジAIシステム向けリコンフィギャラブルAI半導体チップ(開発コードネーム:Sting Ray)の設計・製造・テストを含めた評価を完了し,量産へ移行した.
データセンタが消費する電力の問題により,汎用GPUに依存したシステムの限界が見えてきており,電力効率が高い専用AIチップの普及が不可欠となっている.TAIでは,消費電力と高速処理を両立する独自アーキテクチャのAI半導体チップ開発を自社主導で推し進めてきた.
■技術検証向けチップ「Sting Ray」
Sting Rayは,技術検証用のテストチップという位置づけである.フィジカルAIの普及において消費電力の増加に対応するために,新たなチップの開発が求められている.その前段階としてアーキテクチャや適切な回路規模のリサーチを目的とした実地検証をSting Rayによって行う.
Sting Rayは,UMC社40nmプロセスで製造する再構成可能なLSIであり,低消費電力・低遅延を維持しながら,複数のAIを同時に,かつ切り替えて実行できるチップを目指す.
●AIアプリケーション向けの技術検証を想定
▶再構成可能なLSIの有用性を検証
アプリケーションや,使用するAIモデルに応じて,最適なシステム構成を探索する.
▶配線チャネルの最適化
アーキテクチャの要となる配線の構成に応じた性能を検証可能である.配線の状態を直接観測・制御できる機能が実装されている.
▶低消費電力・低遅延の追求
エッジなどの限られた電力リソースでも高効率に動作し,ms単位で判断が求められるリアルタイム処理の基盤を検証する.
▶設計・検証ソフトウェアの開発
再構成可能な半導体チップにユーザの回路を実現するための設計ソフトウェア,および,Sting Rayが正しく動作することを確認できる検証ソフトウェアを自社開発しており,その検証と機能改善を行う.
●想定用途(フィジカルAI分野)
高度な現場判断が必要とされる,次のようなフィジカルAIへの組み込みを想定している.
▶インフラ・鉄道
同時に多数のカメラやセンサを使って,リアルタイムに異常を検知する点検・保守システム
▶製造・工場
品質確認や外観検査を,複数のラインで同時に行う自動化システム
▶ロボティクス
状況の変化に応じて瞬時に判断と制御を行う産業用の自律型移動ロボット
◾️次期プロジェクトも進行中
次世代AI半導体チップの量産に向けたManta Rayプロジェクトを進める
●低消費電力・低遅延アプリケーション向け
低消費電力かつ低遅延なAI処理能力は,リアルタイム性と信頼性が厳しく求められる現場領域(フィジカルAI分野)において最大の強みを発揮する.今後は,次の産業分野への導入・社会実装を進める.
・鉄道・インフラ
・製造・検査
・産業ロボット
Sting Rayテストチップの完成を契機に,開発環境の整備から応用領域の探索,パートナ連携,そして社会実装へと段階的にプロセスを進める.
2026年8月6日に東京・日本橋で行われるイベント fpgax でデモを公開予定である.
参考文献
(1)fpgax