FPGAは汎用品!CEO想いを語る
ここ2年ほどの半導体不足に伴うFPGAの供給難を受け、既存のデザインを異なるFPGAへ移植したエンジニアも多かったのではないでしょうか。長いリードタイムが提示される中、新しいFPGAベンダも注目されています。前号(2023年8月)でも紹介したEfinixは、国内でも注目を集めているFPGAベンダです。
2023年11月、CEOであるSammy氏が来日された際、JAPI (Japan, APAC, and India)のセールスVP 兼 日本のカントリーマネージャーである中西さんとともに、企業文化やEfinix FPGAの現況と今後の展望について教えていただきました。
聞き手:FPGAマガジン編集部(当記事はFPGAマガジン特別版No.2に掲載されたものです)
●Efinix設立と企業文化について教えてください
Sammy:私とCTOのTony Ngaiはアルテラ(現インテル)からスピンオフして2012年にEfinixを創業しました。効率性の向上が、イノベーションにつながると信じており、社名のEFINIXは、
「Efficient Technology and Infinite Possibility」
から来ています。新しいテクノロジを生かして効率のよい回路を作り、従来のFPGAに対して小さなシリコンでもより価値あるものを作りたいと思っています。
企業文化としては、
・より速く結論を出す
・言い訳しない
・グローバルな人材活用
ということが挙げられます。
これらは技術開発以外についても言えます。各国のビジネスについては、それぞれの文化を尊重するために、本社があれこれ言わずにローカル・オフィスに任せています。スターバックスが日本の市場にうまく適合させてビジネスを成功させていますが、我々も同じように考えています。(今回、日本のスターバックスにも行きましたが、日本の抹茶ラテはとてもおいしかったです)。
●半導体不足下でEfinix FPGAを採用した例を幾つか聞いています。国内外でどの程度の影響がありましたか?
Sammy:標準的なCMOSレシピのみで製造しているので、近年の半導体不足の中でもしっかりと製品を供給できていました。我々にとってこのような状況は、多くの顧客にFPGAを評価していただき、製品のよい部分に気付いていただけるよいチャンスでした。
2か月ほど前に欧州の顧客数社と商談がありましたが全ての顧客から、「おかげで厳しい状況を乗り越えることができた、ありがとう」と言っていただけました。技術力ももちろん重要なのですが、信用を勝ち取れたと感じており、引き続き顧客との良い関係を継続していきたいです。
日本へは1年ほど前にも訪れており、よい評価を頂いています。そのため、ある程度FPGA不足が解消した現在でも、継続してプロジェクトが進められており、日本国内でのシェアも向上していく手ごたえを感じています。
現在、新しいTitaniumシリーズ向けに、ワールドワイドで1,500を超える新規案件があり、さらに増え続けています。
●注力したい分野(回路規模と産業分野)は?
Sammy:汎用的で使いやすい製品にフォーカスしています。キーマーケットは、医療機器、放送、画像、カメラ、産業機器などだと考えており、その次に車載、無線通信だと思っています。
日本を含めアジアパシフィックの売り上げへの貢献度は大きいので地域としてもとても注目しています。
●製品について他社と差別化できそうな点や、製品の特徴と想定する適用分野を教えてください
Sammy:これまでのFPGAを超えるものを提供できると思っています。従来のFPGAはチップサイズが大きく、消費電力も大きかったと思います。Efinix FPGAは、独自技術によってチップサイズと消費電力を小さくし、それでいてパフォーマンスは高く保てます。RISC-Vをハードコアで搭載することで従来のFPGAマーケットだけでなく、マイコンやASICの一部の市場へも3~5年以内に進出したいと思っています。これらも、「効率的な技術」が鍵となるでしょう。
●サードパーティからEfinixのFPGAが載ったボードが出る予定はありますか
Sammy:現在の製品ラインナップは、比較的回路規模の小さいFPGAが中心となっています。これらのFPGA向けには、ユーザが短期間で開発を始められるようなリファレンスボードを自社で用意できています。回路規模の大きなデバイスやPCIexpress、SerDesのような機能を取り込んでいくと、評価アプリケーションが拡大されるため、サードパーティ製のリファレンスボードも必要になってくるでしょう。自然と2~3社から出てくるのではないかと思っています。
●各方面でAIが注目されています。AIについてはどのように見ていますか
Sammy:FPGAはAIを実現するプラットフォームですが、どのようなAIソリューションが必要となるのかはまだはっきりとは分かりません。10年ほど前に、FPGAはデータセンタ向けのデバイスとして注目されましたが、現在のところそのマーケットが大きくないのと同じで、まだ不透明な領域だと思います。
AIは製品ではなく、インテリジェントなソリューションの一部ですが、我々はそれらの機能を実装するデバイスを用意する側なので、AIが実装されていく状況を見ながら、今後の製品開発に取り込んでいきたいです。
現在のところ、統合開発環境として無償で提供しているEfinity IDEには、FPGAにAIを実装するためのツールとして、Tiny MLというプラットフォームが用意されています。Tiny MLはFPGAチップ上のRISC-Vプロセッサとそのアクセラレータによって実行される推論エンジンです。TensorFlow Lite for Microcontrollersを使って生成した学習済みモデルを簡単にFPGAに実装できます。
特にエッジAIは成長する領域だとみており、我々が目指す「汎用的に使えるFPGA」に付加機能として搭載することで一緒に成長していくと考えています。
●シミュレーション・ソフトウェアと高位合成系のサポートについて教えてください
Sammy:シミュレーションツールについては、既に提供され実績のある外部ベンダのツールをご利用頂き、私たちはFPGAそのものの開発にフォーカスしたいと思っています。
現在のところ、FPGAの回路を高位合成で設計するのは難しく、また高位合成によって作られる回路は、あまり効率が良くならないと思います。Efinixは効率性を重視しており、ツールを進化させる方向性としては、ライブラリを拡充したり、RISC-Vをいかに簡単に使ってもらうかにフォーカスしています。
全てにおいて効率よくFPGAを使いたいユーザがEfinixを選んでくれると思っています。我々は、ユーザがより効率よくFPGAを使えるようなエコシステムの確立に取り組んでいます。
●最後にキーメッセージをお願いします
This is time to join to new era FPGA, try Efinix.
(Efinixの作った新世代のFPGAを使ってみてください)
Sammyさん、中西さん、本日はありがとうございました。