2025/8/27

NECプラットフォームズは,AMD Embedded+に対応した開発キットを発売した.
AMD Embedded+は,FPGAとCPUを1ボードに搭載したアーキテクチャで,FPGAとしてVersal AI Edgeを,CPUとしてRyzen Embeddedプロセッサを使用する.FPGAチップとCPUチップはともにNPUを内蔵しており,AIアクセラレータとして使用できる.
発売された開発キットには,国内で初めてAMD Embedded+アーキテクチャに認定されたマザーボードを中心として,電源や開発ソフトウェアが同梱される.
エッジAIのシステム開発において,FPGAを使ったAIアクセラレータが使われる場合,FPGA内に実現する推論処理の回路設計以外にも,FPGAとCPU両方のハードウェアを準備に工数がかかる.そのため開発全体の工数が膨れ上がり,特にゼロからハードウェアを設計する場合,初期開発コストの高さに加え,開発期間の長さが課題となっている.
PCベースでシステムを構成する場合にもFPGAボードの設計開発に工数がかかる.汎用のFPGAボードを使う場合はハードウェアの新規開発はないが,FPGA側とCPU側を協調動作させるために煩雑な設定作業が必要な場合が多い.
●RyzenとVersalが載ったマザーボードを内蔵
AMD Embedded+に対応したマザーボードには,Versal FPGAとRyzen CPUが実装されており,エッジAI推論アプリケーションで必要になる演算リソースが1つのマザーボード上に含まれている.Ryzen CPU内にはGPU(Radeon)も搭載されているため,高性能なシステムを構築できる.
従来,PCやワークステーションでFPGAを利用するには,マザーボードのPCI ExpressスロットにFPGAボードを挿す構成が一般的だったが,AMD Embedded+では1つのマザーボードでそのような構成にできるので,装置の小型化を期待できる.
さらに,FPGA,CPU,マザーボードといったハードウェアが固定されることで,アプリケーション開発の障壁を低減できる.NECプロットフォームズからは,このハードウェア構成用のレファレンス・デザインが提供されており,FPGAに不慣れなユーザでもAIアプリケーションの立ち上げを短期間で実現できる.
主な仕様は次の通り.
・Versal AI Edge VE2302(Cortex-A72 1.6GHz ×2 / Cortex-R5F ×2,System Logic Cells:328K / PLメモリ:85.6Mb)
・Ryzen Embedded R8840U(Zen4 5.1GHz 8コア/16スレッド, Radeon RDNA3 2.7GHz)
・メモリ(Versal側:2×4GB LPDDR4, Ryzen側:2×DDR5-5600まで 最大96GB)
VersalによりAI推論の前処理やAIアクセラレーション,拡張インターフェースの制御などを行える.
Ryzen側では,OSやその上で動くGUIの処理などの実装に加えて,内蔵NPUを使ったAI推論処理も行える.
リアルタイム性を必要とするAI処理は回路ブロックを持つVersalが得意とする一方で,クラウドAIとアーキテクチャが近いRyzenには,多くのAIモデルを容易にポーティングできるメリットがある.
医療,モビリティ,産業用分野での利用を想定している.
●Embedded+仕様の拡張ボードに対応
AMD Embedded+で規格化された拡張ボードI/Fを搭載している.このI/FにはFPGAの入出力信号が直接引き出されている.
NECでは,要望に応じて拡張ボードの開発や,量産に向けたマザーボードのカスタム開発受託も行うとしている.
●エッジAI構築用のサポートパッケージ
ハードウェアとしてFPGAとCPUを持ち,AI開発フレームワークなどのソフトウェアを使うシステムは開発作業が煩雑になりがちである.NECでは開発期間を短縮できるよう,FPGAのベースデザイン,Armプロセッサのソフトウェア環境,Ryzenプロセッサ用サンプルソフトウェアなどを提供する.
サポートパッケージを使うことで,CPUからFPGAへのオフロードを容易に実現し,ソフトウェア開発のみでエッジAIシステムを構築できるとしている.
これまでFPGAを使ってこなかったユーザでも,サポートパッケージを使うことで,比較的容易にシステム開発できる環境を整える.

●画像による測距システムのデモ


●関連サイト
(1)AMD Embedded+